金利上昇時は固定にするのがセオリー?
金利上昇時は固定にするのが良い,という解説をよく見かけます.
しかし,金利が上昇している状況では,お金を貸す銀行側も,固定金利をその分高く設定します.
従って,
- 銀行が想定したリスク以上に金利が上昇した場合は,固定の方が得(総支払額が少ない)
- 銀行が想定したリスク以上に金利が上昇しなかった場合は,変動の方が得(総支払額が少ない)
と言えるのではないでしょうか.
変動金利と固定金利の金利が同一であれば,上昇時は固定,下降時は変動で間違いありませんが,それぞれの金利が違っているため,比較は単純ではありません.
ただし,銀行と違って,個人が金利上昇時のリスクを負うには限界もあるため,その対策を事前に十分検討しておく必要があります.
- 金利上昇時にも,支払いに耐えられる程度に余裕がある
- 金利上昇を抑えるために,上限付きの変動金利にする
- 変動金利と固定金利に分け,金利上昇時のリスクを減らす
などの対策が考えられます.
3000万を30年で借りて,当初の金利が2%,10年後に +3% の上昇があり,5% になるケースを考えます.また,当初の30年全期間固定金利は 3.5% として,全額変動,半分ずつ,全額固定の3つをシミュレーションしてみます.
全額を変動金利とすると,月々の支払いは110,885円から144,657円と,3万円以上のアップになります.利息は全部で 1802万円支払います.
半額を全期間固定金利とすると,122,798円から139,684円と,1.7万円ほどのアップになります.利息は全部で 1826万円支払います.
全額を固定金利とすると,月々の支払いは134,713円となり,金額のアップはありません.利息は全部で 1849万支払います.
実際にどちらが得かは,金利がどう変動するかと変動金利と固定金利の差がどの程度あるかによります. 変動金利・固定金利の金利設定を変えたり,金利の変動を変えたりしてシミュレーションをすれば,一概にどちらかが良いとは言えないことがわかるかと思います.
変動金利は,金利の変動リスクを受け入れる代わりに,利息の支払いを低減させると考えるとわかりやすいと思います.
もっとも得なのは,受け入れられる最大の変動リスクを想定した上で,利息の支払いを最小限に抑えるプランかと思いますが,金利の変動がどのようになるかわからないので,どちらが得かは終わってみなければわからないことになります.
金利の変動に関して,リスクを受け入れたくない(常に一定額で安心したい)という場合は全期間固定しか選択肢がありませんが,そうではない場合,いろいろなシミュレーションを行って,ベストな方法を探るのが良いと思います.
金利の急上昇に関しては,以下のような対策が考えられます.
- 上限付きの変動金利タイプを選択する
- 固定期間選択型を選択する(ただし固定期間終了後の変動に要注意)
- 繰り上げ返済を行って,元本を早いうちに減らす
元本の残りが多いほど,金利変動時の支払額が大きく変わります.
金利タイプの選択に加え,積極的に繰り上げ返済をすることで,金利変動時のリスクを小さくすることができます.
3000万円を30年間で,2% の金利で借りた場合に,3% 金利が上昇したときの変動額を見てみます.
繰り上げ返済無しの場合の,償還表の利上時返済額の欄をみると,1年後では 48,555円の増加になりますが,10年後では33,772円,15年後では25,380円になることがわかります.ローンの支払いによって元本が減るため,金利変動時のリスクも小さくなっていくことがわかります.
繰り上げ返済を行う場合,元本の減りがより速くなります.その結果,1年後で47,769円,10年後で25,773円,15年後で13,298円と,かなり変動時のリスクが低減することがわかります.
以上まとめると,以下のように考えるのが良いのではないでしょうか.
- 金利変動のリスクがあること自体が問題と感じたり,金利の動向をウォッチできない場合
→利息の支払額は多いが,全期間固定金利(固定期間選択型は固定期間後に金利が変動するので×) - 全額変動金利で,最悪の金利動向パターンを想定しても,支払いが耐えられそう
→変動金利 - 全額変動金利では,最悪の金利動向時に破綻してしまいそう
→以下のような対策をとる.
- ローンを分割し,全期間固定金利と組み合わせる(全期間の金利上昇に有効)
- 上限金利付き変動金利にする(上限付き期間内で上限でも耐えられること,上限金利期間後に更に上昇しても耐えられることを確認)
- 固定期間選択型にする(固定期間後に,金利が上昇しても耐えられることを確認する)
- 繰り上げ返済を行う.(変動金利の方が月々の支払額が少ない分,多く繰上できる)
- 上記の合わせ技