返済額軽減型より期間短縮型の方がお得?

返済額軽減型より,期間短縮型の方が,節約効果が高い,というような解説をよく見かけます.しかし,これは「1度だけ繰り上げ返済をした場合」の話であって,毎月の支払額が同じになるように,繰り返し繰り上げ返済をする場合,当てはまりません.


返済額軽減型の場合は,月々の支払額が小さくなるため,金利が上昇した場合などに対応可能な余裕を多く持つことができ,金利上昇へのリスク対策効果が大きくなります.

それに対して,期間短縮型の場合,一度短くした期間を再度延ばすことは通常できないため,金利上昇時のリスクが高くなります.(銀行によっては,再度のばすことが可能なケースもあるかもしれませんが,Webサイト上で調べた限りでは,そのようなところは見つけられませんでした.)


実際に,5,000万円を借り,30年で返済する場合をシミュレーションしてみます.

金利は全期間2%とすると,月々の支払額は 184,809円となります.これに対して,毎月25万を住宅ローンに支払うとして,支払額との差額(250,000円 - 184,809円)を毎月繰り上げ返済してみます.

この結果を見ると,支払う利息の額はほぼ同額となり,期間短縮型も返済額軽減型も大差ないことがわかります.

※期間短縮型は1ヶ月単位で繰上を行っているため,端数分の誤差が出ています. 期間短縮型では1ヶ月分に満たない金額を次の繰上返済に繰り越しているため,元金の減少がわずかに遅くなり,利息の支払い額も少しだけ多くなります.


まずは,それぞれのシミュレーション結果の概要にある,月々の支払額のグラフを見てください.

返済額軽減型では,月々の支払額がどんどん減っていき,10年目では14万ほどになっています.

つまり,当初の18.4万円の支払いが厳しくなったとしても,その頃であれば繰上返済額を減らすことで,対応が可能です.(その分,支払期間は長くなりますが)

会社の業績不振等による給与の減少があっても,対応しやすいと言えます.

一方,期間短縮型の場合,月々の支払額は18.4万のまま一定です.18.4万の支払いが厳しくなった場合,打つ手はありません.


次に,償還表の表を見てください.

金利設定の利上げシミュに +3.000% を指定しているため,それぞれの年月で,もし金利が +3.000% になった場合の金額が,利上時返済額の列に表示されます.

例えば,10年後に,金利が3%上がったとすると,期間短縮型の場合は,支払額が225,703円になり,+40,893円のアップとなることがわかります. 同様に,返済額軽減型で10年後のところをみると,支払額は183,995円になり,+42,955円のアップとなることがわかります.

毎月の支払いが滞れば破綻しますから,支払額が約4万ほど少ない返済額軽減型の方が,金利上昇のリスクに対応できると言えます.


以上のことを考えれば,繰り上げ返済を毎回行い,同額を支払っていくという条件においては,期間短縮型で行うメリットはなく,返済額軽減型を選ぶべきと言うことがわかります.


なお,繰上返済の手数料がかかったりする場合や,毎月余った金額を使わずに繰上返済していくという強い意志をもてなさそう,という場合はこの方法は使えないかもしれません.